今回はある男性から受けたご相談からワークライフバランスについて考えてみます。
商社勤務の32歳男性Aさん。妻B子さんは金融機関勤務で二人とも総合職。子どもはいないので、今はお互い思い切り仕事に取り組んでいます。そろそろ子どもについてお互い考えようというタイミング。
Aさんのご相談は「妻にドイツへの海外赴任の打診があったそうなんです。私はどうすべきだと思いますか?」というものでした。
皆さまはこのご相談内容についてどのように感じますか。
正解はどこにもない
平成が始まった頃なら、そもそもこのようなご相談は稀なことだったと思います。結婚している女性が働いているケース自体が少数でしたし、既婚女性に海外赴任の打診をする企業も少なかったのではないでしょうか。そう考えると、その頃にもしもこのような状況があったとしたら多くの人は女性側に対して「そんな打診は断るべきだよ」とアドバイスしていたのかもしれません。
その頃を知る私としては「日本企業もついにここまで来たのか…」と感慨深いものはありましたが、Aさんのお悩みは切実です。
Aさんのご相談
髙橋「Aさん、『Aさんがどうすべきか』という正解はどこにもありませんよ。逆に誰に何を言われても最後はAさんとB子さんで結論を出せばいいんですよ。」
Aさん「そうか。そうですよね。自分の父や母からは『B子さんには申し訳ないが断ってもらったほうがいい』と言われてどうしたらいいのかわからなくなって…」
髙橋「Aさんのご両親はB子さんの海外赴任には反対なのですね。B子さん自身はどんなふうにおっしゃっているのですか?」
Aさん「B子は『断るよ』と言うのですが、どうしても本心からそう言っているようには感じられないんです。話し合おうとしても切り上げられてしまって」
髙橋「そうなんですね。B子さんの海外赴任について、駐在する想定期間や働き方、オフィスの環境などについての情報はお聴きになりましたか?」
Aさん「海外赴任ということに動揺してしまって、ほとんど聞いていませんでした」
髙橋「そうだったんですね。Aさんご自身は率直にどんなお気持ちなのですか?」
Aさん「話を聞いたときにすぐ浮かんだのはB子にはチャレンジしてみてもらいたい、という思いでした。自分でもびっくりしました。ただ世間の常識から考えるとどうなのかなとか、両親の考えを聞いたりして迷ってしまって…」
髙橋「そうなんですね。そのことはB子さんにはお伝えになりましたか?」
Aさん「はい。チャレンジしてみれば?と伝えたのですが、B子が『いいよ、断るから』と言うのでそれ以上のことを話せていません」
髙橋「AさんがB子さんを応援する気持ちが伝わってきました。B子さんに一緒に考えたいという気持ちをお伝えしてみませんか。そしてB子さんとお互いの気持ちを素直に話し合ってみては?」
Aさん「そうですね。話してみます」
Aさんから出てきた意外な本音

Aさんのご相談からは「B子さんが本当の気持ちを抑え込んでいる可能性」「ご両親の無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)とのジレンマ」「AさんがB子さんを心から応援する気持ち」などが感じられました。
次のご相談を受けたときには「ドイツ駐在はフランクフルトで2年間の見込み」「オフィスは都市中心部」「住居はオフィスまで電車で10分ほどの住宅地で日本人駐在員が多く暮らすマンションが用意される」等の詳細がわかり、そしてその後、Aさんから意外な本音が出てきたのです。
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